会津からむし織(高級な麻織物) 〜後世に伝えたい日本の伝統工芸織物⑦〜
産地:福島県大沼郡昭和村
福島県の昭和村は江戸時代から越後(新潟)に越後上布(えちごじょうふ)や小千谷縮(おぢやちぢみ)などの原料となる苧麻(ちょま)を供給していました。苧麻は高級な麻です。昭和村の苧麻は「からむし」と呼ばれ、繊維が細くて丈夫、光沢のある最高級品種です。夏に刈り取り、皮をはいだ青苧(あおそ)を乾燥させ、苧績み(おうみ・繊維を繫ぐ)して1本の糸にします。苧麻の栽培から糸づくりまで大変根気のいる作業ですが、雪深いこの地方の女性は「冬はどこにも行けないから糸づくりに励んだ」と言います。貴重な産業だったわけです。
日本では古来より衣服や布の素材は麻織物が中心でしたが、主に大麻草です。対して、会津の「からむし」は高級品として越後商人へ売られました。 戦後の洋装化で越後上布や小千谷縮みの生産量が落ちると、昭和村でも糸づくりだけでなく、からむしを織るようになりました。これが「昭和村からむし織」です。
夏の着物として麻は涼しくて水洗い可能、しかも乾きが早いので最適な素材です。その中でも昭和村のからむしは最高級の麻織物と言えます。