みちのく織物紀行④白鷹お召・小松織物
◉小松織物工房公式サイトhttps://komatsu-orimono-kobo.com
米沢市(山形)の北にある白鷹では飛鳥時代から養蚕が行われていたと言われます。江戸時代、米沢藩の中でも白鷹は絹糸の供給地で米沢の絹織物を支えました。江戸後期から明治に白鷹や長井でも機織りが盛んになったようです。
今では着物ファン垂涎の的「白鷹お召」の産地として有名で、小松織物工房と佐藤新一工房の2件のみで織られています。
創業明治13年(1880年) の小松織物工房さんを訪ね6代目小松寛幸氏よりお話を伺いました。
白鷹お召は「白鷹板締小絣」(しらたかいたじめこがすり)の一つで、板締め技法で絣付けするのが特徴。板締め技法は近江で開発されたものが北上し、白鷹には足利(栃木)から伝わりました。絣は元々南方から伝わりましたが、白鷹は絣の北限と言われます。
[板締め] 図案を元に木の板に板大工が溝を彫ります。板に糸を巻きつけ、挟んで染料を掛けると(ぶっかけ染め)溝の部分に染料が入り絣付けされるしくみ。元々は効率化を図った技術で各地で行われていましたが、設備投資が大きいことなどから、白鷹と村山大島の産地にしか残りませんでした。
板は30枚の板で約80kg。
織り上がった反物の両耳はループ状になっています。これは板に糸を巻きつける時に板の厚み分の余りができるため。
また、白鷹お召は白地が多いのは板締めだからです。板で糸を挟む部分が白く残り、溝の部分が絣として染まるわけですが、白地の場合、板の接地面が大きく板が長持ちします。
[ぶっかけ染め]
1時間くらいかけて、染料(熱湯)を掛け続けます。概ね800〜1000回くらい。「夏場は暑くて地獄ですよ。冬も蒸気で結露がすごい」とのこと。
[画像]この中に板を置いて「ぶっかけ染め」をします
[白鷹お召]
風合いは塩沢お召と似ていますが、糸が太めでシボが大きい(鬼シボ)のが特徴。手織りの板締め小絣を1反織るのに平均1ヶ月掛かり、年間生産は何十反レベル。今では幻の織物と化しています。
小松織物さんではお召の他、紬や絹上布(夏もの)も織られていて、小絣以外のお手頃価格で魅力的な織物も多くあります。
6代目小松寛幸さんは50代前半とまだまだ若手。穏やかで真面目な職人気質を感じました。また、求人はしていないのに、若い方が「白鷹の機織りがしたい」と他県から希望して入って来られ、今では重要な戦力となっているとか。「地味で大変な仕事ですが、職人が手間を楽しんで織ってくれていることに感謝している」と言う寛幸さんの暖かい言葉に産地の未来を感じます。