福岡の織物紀行①「小倉織」
「豊前小倉織研究会」を訪ね、代表の大和恵子さんよりお話を伺いました。
[歴史]
小倉織は経糸の密度が高く丈夫なので、袴、帯、羽織などとして使われました。徳川家康が小倉織の袷羽織を着て鷹狩に出かけたことや、江戸時代「武士の袴は小倉に限る」などの記述があるそうです。
現在、小倉織の帯(主に名古屋帯)は着物愛好者羨望の品となっています。
[豊前小倉織研究会の織り]
ここでは古法に習い和綿を手紡ぎした双糸にし、植物染料で染めて手織りされます(紡績糸と手紡ぎ単糸使用の帯も有り)。手紡ぎ糸は機械紡績糸よりもしっかりと良い色に染まるそうです。
縦糸の密度が高く横糸が殆ど見えないため縞が鮮明になります。縞のグラデーションのみで表現される小倉織りには無限の美しさがあります。
木綿の手織り帯は締め易く緩まないのも特徴。
「綿はシワが残り易くないですか?」と質問してみたところ「20年以上締めているけど全く気にならない」とのことでした。糸に弾力性があると言うことだと思います。

和綿は短繊維で紡績には向かないそうです。綿打ち(繊維の塊をほぐす)して綿筒(じんき)と言う筒状にし、糸車で捻りを掛けながら糸にします

[下図:糸繰り体験中]
綿筒を左手に持って針状の棒に当てて引くと絡まって糸になるのが不思議な体験でした。引く速さで細くなったり太くなったりします。

糸はすべて草木染め。天然染料には何らかの雑味があって深く落ち着いた色になり、補色(反対色)同士であっても調和するそうです。
藍(あい)、胡桃(くるみ)、矢車附子(やしゃぶし)、五倍子(ごばいし)、苅安(かりやす)、茜(あかね)、紫紺(しこん)、コチニール、槐樹(えんじゅ)など。

