越後染め織り紀行① 本塩沢・塩沢紬
新潟の染め織り産地を巡ってきたので備忘録を兼ねて少しずつまとめてみます。まずは南魚沼市から。
酒井織物(新潟県南魚沼市塩沢)は本塩沢(塩沢お召)の代表的な織元さん。3代目の酒井智子社長より詳しく話を伺いました。
本塩沢は織る前に糸を精練(せいれん・生糸のにかわ質であるセリシンを取り除く)する先精錬。
緯糸(よこいと)に強撚糸(1mに約2,000回転の撚り糸)を使用。右撚り2本、左撚り2本と交互に入れて甘撚りの絣糸を織り込みます。これを湯もみすると生地が縮んで独特のシボとシャリ感が生まれます。最も着崩れしにくい素材だと言えるでしょう。
強撚糸を使いサラリとした風合いの為、主に単衣の着物として好まれます。また駒糸を使った夏塩沢もあります。夏塩沢はキズが出やすく織り人泣かせな織物だそうで、酒井織物さんが独自に開発された夏ものも見せて頂きました。
本塩沢の絣付けには「手括り(てくくり)」、「手摺込み(てすりこみ)」、「型紙捺染(かたがみなっせん)」などがあり、ここでは手摺込みと手括りの実演を見せて頂きました。
酒井さんでは糸精錬や整経なども含めて殆ど手作業でされていましたが、糸の艶や風合いを大切にされているからだそうです。「塩沢は忍耐の織物」と表現されていたのが印象的でした。