柳宗悦著「手仕事の日本」お勧めの一冊
先日たまたま書店で見つけた柳宗悦著「手仕事の日本」を読んでみました。全国の様々な工芸品の話が次々と出てくるので正直ちんぷんかんぷんで読み流す部分も多かったのですが、幸い着物について多く取り上げられていたので、なんとか読破。興味深かったのは、大正から昭和15年頃までに著者が全国を巡って諸工芸の現状を取材してまとめていて、しかもこの本が書かれたのは太平洋戦争真っ只中の時代ということです。その頃既に、大量生産型の機械化が、各地方で発達した手仕事を浸食していることを非常に憂いて、機械化に走ってしまっている工芸品に「質が落ちた、力を失った」とか辛口の批判を加え、更にアドバイスまでしています。また、後記の一文で「吾々が固有のものを尊ぶということは、他の国のものをそしるとか侮るとかいう意味があってはなりません・・・中略・・・国々はお互いに固有のものを尊びあわねばなりません・・・」とあり、戦時中の文章ということを忘れてしまいそうです。70年近く前に書かれているのに、なんだか古い文章に思えない不思議な感覚を覚えます。
着物を商っていると、深く考えさせられることがあります。現代の生活スタイルの中で機械生産型の織物や染め物を否定してしまっては、着物はごく一部の愛好家やセレブだけのものになってしまいます。着物の裾野を広げつつ、手仕事の工芸品をしっかり守っていくことが大切だと私は思っています。この本を読んで改めて、本物を見る目を研ぎすませて、良いものを商っていかないといけないし、そこに自分の存在意義があると思うことができました。いい仕事です![E:happy01]楽じゃないけど・・・