越後染め織り紀行⑨「吉澤織物」十日町紬・明石縮み・十日町友禅
吉澤織物は染め(十日町友禅)と織り(紬、明石縮み)を工房で一貫生産している総合メーカー。 分業の京都に対して、一貫生産は十日町ならではです。
元々は織物専門でしたが、昭和38年に吉澤織物が「くろっぱ」(黒絵羽・黒羽織)を発売して大ヒットさせたのをきっかけに友禅染めを手がけるようになったそうです。この頃から友禅染めに取り組む他のメーカーも現れ、「十日町友禅」と言う一大産地を形成していきました。
吉澤織物で印象的だったのは、染めも織りも若い職人さんが多いこと。織物についても自社工場で募集して、現在2人育成中とのこと。これは本当に素晴らしいことです!
友禅染め
◉友禅工房では型友禅を拝見しました。板に白生地を張り型紙を置いて職人さんが刷毛などで染色します。振袖のような絵羽柄の場合、数百枚の型紙が必要で、その数だけ染めることになります。この広いスペースに板が40枚くらい並べてあったでしょうか、大規模に行われていることに驚きます。
吉澤友禅では手描き友禅(手挿し)も行っていて(※工房の画像なし)、振袖、訪問着、附下を染めています。クオリティーが高く、クラシカルで洗練されたデザインが多くのユーザー様から支持されています。一貫生産の強みもあって比較的お求めやすく流通しています。
◉地染め:型紙で染めた模様を防染糊で伏せ(防染用の型紙がある)、刷毛やピース(霧吹き染め)で地色を染めます。
地染めの部屋は湿度と温度が一定に保たれています。特に複雑なぼかしは温湿度が変化するとぼかしが合わなくなってしまうそうです。
◉水元(友禅流し)の水は地下水を使います。軟水で温度は一年間安定しています。
明石縮み(織り)
◉吉澤織物の明石縮みは2246本(通常の紬は1200本)もの細い経糸を織るので、細かい筬(おさ)を使います。 緯糸(よこいと)は1mに4000回もの撚りを掛けた強撚糸(八丁撚糸でゆっくり撚りをかける)を右撚り、左撚り交互に織り込み、湯もみすると縮んでシボが生まれます。「蝉の羽」と表現されるほど、生地の透け感とサラリとした風合いが特徴。
中でも「よろけ筬(おさ)」を使うものは経糸が左右によろけて表情がより豊かになります。「動きがだんだん激しくなったり緩やかになったりして筬を打つ場所が変わってくるのでよろける」との説明でした。
◉細かな絣の真綿紬